いたれりつくせり。

アニオタからジャニオタ。オタクのオタク。

二人の父―Kis-My-Ft2 FREE HUGS! 横尾渉『キャッチボールをしよう』

「私はなぜ、横尾渉を好きなのか」

ツアーで各地を廻り、キスマイと季節を駆け抜けていると、必然的にこの疑問にぶつかる。大抵は顔とか、足の長さとか、単純な答えで納得することがほとんどだけれど、実際に彼に心を動かされるときに見た目が理由かと言われると、そうではない。

 

今年のツアーにおける横尾渉のソロ曲『キャッチボールをしよう』は、2019年夏という二度とこない季節を巻き込んで、切なさとか懐かしさとか、そういった誰しもが心に持っている感情を、ハーモニカとオレンジ色にのせて歌った、横尾渉にしかできない唯一無二の曲になった。

その軌跡を備忘までに記しておきたい。

 

 

『キャッチボールをしよう』は、3年前のソロ曲『ワッター弁当』と大きく違う。

前回のソロ曲のテーマは「料理」。今回は、「父」と「野球」。前回はハッピーでアップテンポ、ラップを含むポップな曲調だったのに対し、今回はハーモニカの演奏を含む、しっとりと聞かせるミディアムバラードである。

そう、ミディアムバラードなのである。

今回のアルバムの情報が解禁され、タイトルやテーマ、曲の提供者(ビリケンさん)が公開されるにつれて、私は喜びではなく、不安を感じた。そして視聴を聞いたとき、この漠然とした不安が、はっきりとした「心配」に変わった。

みんなが聞いてくれなかったらどうしよう。

 

ここで、前回のソロ曲をおさらいしてみよう。

前回のソロ曲『ワッター弁当』では、SnowMan複数人を筆頭としたバックがたくさんついていた。曲中、(メンバー登場はなかったが)各キスマイメンバーのソロパートがあった。

曲の後半にはメンバーの千賀くんが登場した。横尾さんと千賀くんは、センターステージから花道をとおり、バックステージに移動する際、寿司のかたちをしたキーホルダーを、客席にサインボールのように投げていた。

横尾渉と同じか、それ以上にひねくれた物の見方をする私の視点では、前回のソロは「お客さんを立たせない・飽きさせないため、出来うる限りの配慮を尽くした演出」だったのだ

今回のソロ曲は、どうあがいても上記演出をやる余地は全くないように聞こえた。

 

どうしよう、皆が聞いてくれなかったら。トイレタイムになってしまったら、悲しい。

心配のしすぎだ、東京ドームを埋められるアイドルだろう?、キスマイだろう?、そう思っていただける方が一人でもいたらそれほど嬉しいことはない。ただ、グループ、メンバーに関わらず、バラードでトイレに立つ人間は比較的多い、というのは事実だと思う。

 

私が一番避けたいのは、「横尾さんが自分に対して卑屈に、悲観的に、自虐的になってしまうこと」なのだ。それは、もうすぐ担当6年目になる私にも、いまだによくわからないタイミングで急にやってくる。ひとたびそうなると、「どうせ俺のファン少ないから」とか、平気で言いはじめてしまうのだ。

最近はそうなってしまうような機会がだいぶ減ったとはいえ、彼のこのスイッチが入ってしまうと、苦しい。ファンとしてはペンライトを振り上げることしかできないし、他のファンは、「また始まった」「横尾さん言い過ぎ」となる。だからそういう、彼の「自虐スイッチ」のとっかかりとなりうるものは出来る限りなくしたいと思っている。まあ、これが俗にいう「お花畑」なのかもしれない。

 

さて、ここまではすべてツアー前が始まる前の、私の妄想である。壮大な前振りをしたところで、実際の演出はどうだったのか、と思われるかもしれない。

 

実際の演出は、想像通りだった。

メインステージで、横尾渉一人。ハーモニカを吹き、歌を歌う。一番大きなモニターには、とある父と息子の物語が砂絵で示される。舞台上手には、中村海人くんと七五三掛龍也くんの二人が、それぞれ父と息子を演じてキャッチボールをする。中村くんも七五三掛くんも、バックというよりも、完全に演出の一部の扱いだ。

モニターにはほとんどずっと、横尾渉の顔が大写しで映る。震える手でマイクを持ち、緊張を隠すこともなく、丁寧に、必死に、思いを込めてワンフレーズずつ歌う。

これだけ、である。

 

東京、埼玉、名古屋と、ツアーはどんどん過ぎ去っていった。

演出は初日から大きく変わらなかった。

 

でも、横尾さんは徐々にうまくなっていった。

 

6月16日、期待と予想通り、横尾さんは最後に父の日の一言を添えてくれた。「皆さん、今日は父の日です。今日家に帰ったら、お父さんに「ありがとう」を言ってあげてくださいね。」*1なんて横尾渉なんだろうとおもった。

 

正直、ツアー中は毎公演、そわそわしていた。最初の『A.D.D.I.C.T』や、MC中の横尾さんに対するリアクションに、必要以上の失笑や苦笑が起こらないかどうか、周りのファンのリアクションを確認するのに必死だったのだ。

『君、僕』オルゴールバージョンが聞こえ、ステージに横尾さんのシルエットが見えたら即・立ち上がる。オレンジ色のペンライトを振りながら、祈るような気持ちでステージを注視する。曲に集中できるかは、正直周りのファン次第なところがある。聞かなくてもいいから、しゃべらないでくれ、笑わないでくれ、私の好きな人なんだ。

好きだから、胸いっぱいだから立っているんじゃなく、周りを威嚇して、周りに笑われないか、笑い声が起きようがもんなら威嚇してやるぐらいの気持ちで見ている。なんのためのソロ曲だ、という話である。

 

こういう時に思ってしまうのだ。私はなぜ、横尾渉が好きなのだろう、と。

 

途中でふと浮かんだ、「依存」というフレーズが頭を離れない。

私は横尾渉に依存している。

依存しているのだ。その形が少しでも共依存に近づけばいいな、とファンとしてペンライトを振ったり、声を出したりしているけど、あくまで一方的な依存に過ぎない。

私が横尾渉の悪口を言われたり、笑われたりするのが嫌なのは、「私が好きな人が馬鹿にされている」というよりも、「横尾さんが馬鹿にされていると、私まで馬鹿にされているように感じる」からだ。

エゴにあふれていて、結局自分主体でしかない考え方だけど、今の時点ではこれが真実だ。私は横尾渉と、「ひねくれてない真人間になろうよレース」を勝手に開催している。基本的には横尾さんを先にゴールさせてあげたくて、頑張っているけど、じゃあ自分がそれを引き留めるような要因になっていないか、といわれたらすぐには首を縦に振れない。

 

7月9日。

ジャニ―さんの訃報。

 

7月12日。

FREE HUGS! ツアーラストの地、京セラドーム初日。

冒頭のメンバー挨拶はもちろん、今までは楽しく聞いていた様々な曲が別の意味をもっているような気がして、泣いているファンも多かったように思う。

不謹慎な話だが、ジャニーさんの訃報を聞いてから、横尾渉のソロ曲がどう変わるのか期待をしていた。ワイドショーでさんざん、「ジャニーズ事務所の家族感」「皆の『父』としてのジャニーさん」がもてはやされていた。奇しくも、「父」がテーマの横尾さんの曲、こういう時だからこそ、見られるパフォーマンスがあるはずだ。

涙、笑顔、時折当たり前のように出てくるジャニーさんの話題。想像以上の展開を見せるステージを見て、ソロ曲が近づくにつれ期待値がどんどん上がっていった。

 

『君、僕。』が流れる、オレンジに染まる京セラドーム。

「渉」コールが、聞こえて、だんだんと大きくなって。

響き渡るハーモニカの音で、もう泣いてしまった。

 

横尾さんは、「不器用」と称されることが多い。ただ、実際は「不器用」というより、「馬鹿正直」な人だと思う。

モニターに映った横尾渉は笑顔だった。

嘘がつけない、取り繕わない彼は、ファンを愛するよりも、動物を慈しむことのほうがはるかに得意な彼は、「ふわあ」としか例えようのない、素敵な笑みを浮かべて歌っていた。

緊張が見えない。なにより、音程が本当に外れない。緊張しているとこわばるのに、こういう時は、こういう時だからこそ、絶好調なのが横尾渉なのだ。

 

ツアー中、何度も聞いた歌詞が全く違う意味をもって襲ってくる。

ファンの期待通り、横尾渉の「父」はこの日は確実に「ジャニーさん」だった。

個人的に横尾さんが、ジャニーさんのことを一段と思い浮かべて歌ったのではないかな、と思ったフレーズだ。

「お祝い事や プレゼントとか照れて受け取らないけど」

無理をするのでもなく、とにかく慈しみ、思い出すように、彼はこの歌を歌った。

 

ソロ曲、最後のフレーズ。

「ありがとう、父さん」

上を向いて、 上を指さし、そのフレーズを言った。

あまりにも優しかった。

 鳥肌が立った。涙が止まらず、しゃくりあげた。

 

7月14日。

FREE HUGS! ツアーオーラス。

大阪の3日間、天に向かっての「ありがとう、父さん」は続いた。日々微妙に声色や、雰囲気を変えながら、それぞれに素敵なオレンジ色の「ありがとう」だった。

最後に歌唱を終えて、メインステージを歩いて、そこに落ちている野球ボールを横尾さんは拾った。しゃがんだ状態で、ボールを両手でもつようにしながらマイクをもち、「ありがとう」*2と低めの声でつぶやいたかと思えば、

上を指さし、天高く、思いっきり天高く、ボールを放り投げた。

 

このツアーを通して、横尾渉は二人の「父さん」にこの曲をささげた。

野球好きな少年は、デビューなんて無理だとあきらめかけていた青年は、ドーム規模の会場でオレンジを背負って「ひとりで」ソロ曲ができるようになったアイドルは、大好きなもう一人の父親と、京セラドームであの日キャッチボールをした。

 

 

とにかく背が高くて、足が長くて、顔がきれいで、そして少々人間的に正直すぎる、33歳を今日も応援している。早くまた、横尾渉に会いたい。avex広報担当のの復活を待ち望みながら、私はまだまだキスマイという超特急の列車に振り回されていたいなと思う。

(※下書きに眠っていた記事なのだけど、この記事をこのまま埋もれさせたら私はきっとすぐに忘れてしまうと思って復活させた)

 

 

 

 

以下、参照ツイート(完全自分備忘用)

https://twitter.com/nisereal1012/status/1150363457549557761:embed#わたる、MCで振られる→色々いってしまう→嫌われるの怖くて保身に走る→結果卑屈に聞こえるし結局話題の時間延びるの、直したいなら頑張ろー!私はわかりみしかないのでなにも言えないです!]

 

 

*1:ニュアンス

*2:正確にいうと、ありーがとぉ、に近い