いたれりつくせり。

君がナンバーワン!※ただしここの「君」は三人とする♡

ジャニオタ×物理001: サインボール争奪戦

 あなたはサインボールを取れるか?

 スタトロで自担があなたの方向にサインボールを投げてくれた。ただ、目の前にいた盛り髪が、あろうことにか腕を伸ばしきってうちわを高く掲げたではないか。怒りマックス、うちわは胸の高さまでだ。巨大な4連うちわにハイヒールも加わり、視界を完璧に遮られるほどの壁が出来てしまった。

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 …さあ、あなたは大好きな自担からサインボールをもらえるだろうか?

 この問題を見て「難しいよ!」と叫んだり、回れ右しかけた方はおそらく物理があまり好きではないだろう。確かに、この質問は難しい。ただ、二次元運動の概念を理解すれば解ける。

 私は物理がものすごく苦手だった。授業が分からず、辛い思いをした…はずが、現在は大学で物理を専攻している。この記事は、『ジャニオタに馴染みのある設定を用いることで、物理をせめてもう少し身近に感じてもらいたい…!』という気持ちで書いている。

 今回は問題を解くことに重点を置く。そのため、なぜこの式になるかなどの説明はできる限り省いている。解ければオッケー!という、軽いノリで読み進めてもらえると嬉しい。さあ、うちわと心の壁を乗り越えて、サインボールを掴んでみよう。

 

 戦う準備

 とりかかるより前に、ものすごくあっさり「一次元の運動」をおさらいしてみる。

式を見ると頭痛がするタイプの方は一旦「アリーナの場合…」まで読み飛ばしていただいて構わない。

おさらい:一次元の運動
  1. x軸(水平、↔︎)とy軸(垂直、↕︎)の動きは互いに影響しない。
  2. 一旦手元を離れた物体はx軸上を同じスピードで進み続ける。
  3. 一旦手元を離れた物体はy軸上で重力だけに影響される。 
運動の式

運動はこの3つの式があればどんな問題でも出来る。

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 「あれ?私が習った式と微妙に見た目が違う…?」というあなた。

 使う座標によってΔxのところがΔyになったり、Δのところがそもそも(x2-x1)になったり…と差分はたくさんあるが、基本的に言いたいことは同じである。

 少し注目してみてみると、①の式にはΔxが、③の式にはtが含まれていないことに気づくだろう。 それぞれの式の特徴を記すと、

①の式は位置情報(Δx)を持っておらず時間と共に変化する速度vを求めたいときに使える。

③の式は時間(t)を持っていないときに使う。特に、投射物(開始点と着地点が水平)のときに使える。

②の式は基本どんなときでも使える。

 今からの問題を解くときもほぼ②しか使わない。 

 

 

 アリーナの場合:水平投射

 それでは問題を解いていこう。いきなりの4連うちわとの戦いは大変なので、まずはアリーナ席から。

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1.5m上空にいるアイドルが速度3.8m/sでボールを並行に投げる。アイドルと自分のx軸上の距離が2mであった場合、あなたはサインボールをとれるか。なお、前後0.15mは座席の範囲内であるため、その範囲内に着地したサインボールは自分のものであるとする。

 解くうえで先ほど紹介した基本となる式を使っていく。

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 それではやってみよう。

ステップ1.  自分と彼とのタテ軸の距離を求める

 このタテ軸の距離はすでに質問に記されている。1.5mだ。

ステップ2.  ボールが「私の高さ」に到達するまでの時間を求める

 上記の式の②を使い、tを求める。

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tは約0.55秒。時間は0以下にはなれないため、0以下になったtは省いている。

ステップ3. その間に、ボールがどれだけヨコ軸を移動したかを求める

 「その間に」と説明にあるように、今求めたtを代入しΔxを求める。

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 Δxが答え。つまり、ボールは自担から2.10mの地点に着地する

 自担と2m離れていて、10cm後ろも自分の座席の範囲内であるため、あなたがサインボールを無事取れたことになる。

 

 スタンドの場合:斜方投射    

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自分より2.7m下方のアイドルが速度10m/s、水平から上方60°の角度でボールを投げる。アイドルと自分のx軸上の距離が2.8mであった場合、あなたはサインボールをとれるか。なお、前後0.15mは座席の範囲内であるため、その範囲内に着地したサインボールは自分のものであるとする。

 …角度が新しく加わっただけで、解き方も使う式も全く同じである。

 では先ほどの3ステップと共にもう一度解いていこう。

ステップ1.  自分と彼とのタテ軸の距離を求める

 先ほどと同じく、タテ軸の距離は質問に記されている。今回は2.7mだ。

ステップ2.  ボールが「私の高さ」に到達するまでの時間を求める

 時間を求めるうえで、先ほどのようにv0yが必要となる。今回はv0とθのみ与えられているため、この二つからx軸方向とy軸方向の速度(v0xとv0y)を計算する必要がある。

 こちらの画像を見てもらえると分かりやすい。

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 斜めの速度がv0、水平との角度がθであるとき、v0x = v0cos(θ)、v0y = v0sin(θ) となる。

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 続けてtを解いていく。

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 このような質問の場合、0以上のtが二つ*1存在する。

 なぜだろうか?斜方投射の場合、ボールが目的のy軸を2回通る機会があるからである。

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  t1でボールを受け取れはしないので、t2を代入。

ステップ3. その間に、ボールがどれだけヨコ軸を移動したかを求める

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ボールははるかはるか後ろへと飛んでいてしまい、サインボールは取れない。 

 サインボールはあなたの目線の高さをすごいスピードで通過し、遥かスタンド後列の誰かに受け取られることとなるだろう。

 具体的に何を変えれば、このサインボールはとれただろうか?*2今回の質問はコンサートを想定しているので、「席を移動する」「他座席まで手を伸ばす」は回答として不正解。この場合、投射角度(θ)か最初の速度(v0)が変わればよい。やっぱりサインボールが取れるかどうかはアイドル次第だった。

 

 アンコール:盛り髪マナー違反と戦え

 それではいよいよ、件の盛り髪と戦ってみよう。 

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自分より2.7m下方のアイドルが速度8.2m/s、水平から上方70°の角度でボールを投げる。ただし、2.5mの地点に1.85mの巨大なうちわの壁が存在する。アイドルと自分のx軸上の距離が2.8mであった場合、あなたはサインボールをとれるか。

なお、前後0.15mは座席の範囲内であるため、その範囲内に着地したサインボールは自分のものであるとする。

  落ち着いて考えてみよう。

 うちわの壁がなくならないとして、あなたがサインボールを取るためには、ボールが壁を超えてくれるしかない。ということはまず、「距離x2(2.5m)の時点でのボールの高さが知りたい」わけだ。*3そのボールの高さがうちわの壁よりも高ければ、先ほどと全く同じ方法であなたがサインボールをとれるか、を知ることができる。

 

 では解いていこう。

 先ほどのステップと似てはいるが、今回は先に求める座標をyではなくxにしている。

ステップ1-1.  うちわの壁までのヨコ軸の距離を求める

 質問に記されているとおり、2.5m。

ステップ1-2.  ボールが盛り髪の真上に到達するまでの時間を求める

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ステップ1-3. その間に、ボールがどれだけタテ軸を移動したかを求める 

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 盛り髪の真上に到達する際のボールの高さは発射地点から1.89m。うちわの壁は1.85mなので、無事うちわの壁を超えられる

 さて、問題はあなたがサインボールを取れるか同じ流れの計算をもう一度する。

ステップ2-1.  自分と彼とのタテ軸の距離を求める

 先ほどと同じく、タテ軸の距離は質問に記されている。2.7m。

ステップ2-2.  ボールが「私の高さ」に到達するまでの時間を求める

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ステップ2-3. その間に、ボールがどれだけヨコ軸を移動したかを求める

 

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Δxが答え。つまり、ボールは自担から2.93mの地点に着地する

あなたは自担と2.8m離れていて、13cm後ろも自分の座席の範囲内である。

盛り髪との戦いを無事制し、あなたはサインボールをとれた。

 

最後に

 いかがだっただろうか。少しでも「物理って現実でも使うときあるんだなあ…」と思っていただけたならものすごく嬉しい。

 想定外に質問を作るのが難しく、本当にしょうもない感想だが先生ってすごいなあ…としみじみ思った。説明はしがない大学生が趣味で書いているだけなので、計算ミス、説明の間違いなどあったら遠慮無く教えてください。

 もっと根本からしっかり勉強してみたいなという方は、以下のサイトをぜひ。

水平投射 ■わかりやすい高校物理の部屋■

斜方投射1 ■わかりやすい高校物理の部屋■

斜方投射2 ■わかりやすい高校物理の部屋■

 

…そして次回予告(更新しました)

ジャニオタ×物理002: あなたのうちわは自担の視界に入ったか - いたれりつくせり。

*1:t1,t2

*2:比較的よく出題される質問

*3:解き方は他にもある。例えば「うちわの壁」とボールが同じ高さになる時間を求め、それぞれのときの位置を調べる方法だ。ただしこちらは分かりにくいと判断したため省いている。