いたれりつくせり。

アニオタからジャニオタ。オタクのオタク。

4月10日

4月9日の早朝。中学校時代の先輩が夢に出てきた。

きっとその前の日中、あんなに大好きだった中学校時代のことも最近思い出せなくなってきたなあ、なんて考えていたからだろう。「そんなわけないだろう、君が忘れているふりをしているだけで確かにここに刻み込まれているぞ」、といわんばかりに脳は私に幻想を見せてきた。

 

あいつ、今何してるんだろう。

寝ぼけた頭で必死で下の名前の漢字を思い出しながら、スマートフォンにその名前を打ち込む。いくつか検索結果が出てくる。大学時代に何らかのコンテストで表彰されたとかいう記事で久しぶりに顔を見て、あんまり変わらないなあ、なんて考える。

 

今はもう28歳のはずだ。最近は何をしているのだろう。検索結果を過去1年間に絞り込む。

令和元年、研究室卒業。そこから音沙汰なし。

令和元年って何年前だったっけ。確かいまは令和4年だった気がする。

 

その先輩も、1994年生まれの「けんちゃん」だ。

 

舞台、『エゴ・サーチ』。

告知されてから本番までの期間がこれまでに今江くん関連で観劇できた舞台だと最短だったのもあり、あれよあれよという間に本番の日を迎えてしまった。

 

鴻上さんの戯曲自体は舞台出演の情報解禁があって数日中に読んだ。

読み始めた当初は「なるほど、いわゆる『鴻上さんっぽい』感じね」と思い、今江くんが一色を演じるさまを想像しながら読み進めた。

しかし後半。とにかく怒涛の展開。これは、謎が解ける!とか、まさかの黒幕!とかではなく、シーンの転換と演者の身体的な動きを指す。脳内の『今江くん演じる一色健治』がこのあたりでいなくなってしまった。

難易度が高い。想像ができない。体を動かすことはかなり得意な彼だけれど、ここまで激しい動きと激しい感情を一致させる役は初めてだ。

シーンの転換をどう表現するのか気になったのもあり、これまでに上演した際の公演DVDも購入しようかな、と思った。でも、そんなことをしたらきっとその時の一色健治と、今江くん演じる一色健治を比べてしまうだろうな、と思ってやめた。

 

劇場で、板の上で、このホンをどうやって展開するのだろう。その物語の渦中にいる一色健治を、今江くんはどう演じるんだろう。

 

不安…ではなかった。

今江くんが「エンディング・あとがきを読んだ」と発言していたのが大きい。あそこが物語の本編だと思ったし、私も小山田さんの書く言葉の力を知ることができたから。そこを念頭において演じるのなら、きっと素敵な一色がみられるはずだ。

 

 

4月10日。2時間。

目の前に、読んだ世界が表現されていた。

「当たり前だよ、それが舞台だ」、と言われたらそこまでだけれど、ここまで持ってくるのにどれだけ腐心したのだろうと思う。全員がそれぞれ生きていて、その中央にきちんと一色健治がいて、それを演じているのが応援している今江くんなのだ。

嬉しかった。本当に嬉しかった。

 

『初外部舞台にて初主演!』がまかり通ってしまう特殊な事務所で14年目を迎えた今江くんに対して、これまで客席から見てきて「力不足だなあ」と感じたこともあった。それこそ1年前だって感じていた。

ファンとしてはどんどん進化する彼を見て褒めてするだけで楽なモンなのだが、私は脳内に仮想敵を飼ってしまうタイプの不埒なファンでもあるので、一見さんにこんなもんか、と思われないだろうか、明らかに頼りない、と思われないだろうか、とかいろいろ気にしてしまうのである。

 

「演技に対して非常に熱心に情熱を持って取り組んでいる*1」今江くんは、ここ1年で等身大になることも肩の力を抜くことも覚えて、もちろんそれ以外にも舞台の基本のキであることも覚えて、輝く笑顔とステップとリズム感覚抜群のダンスはそのままに、非常に座長然としてきたなあ、と思う。

 

それが嬉しい。嬉しくて、伝えたくて、だから拍手をした。

 

なんちゅうか、かわいい。素直な子やなあ...と思う。そしていろいろ試したい年頃なのだろうなと。

小山田さんが、自身の弟さんについて書いた言葉だけど、ここに引用する。

ゲネプロは納得いかなかった、と綴っていた今江くんにとって、初日はどうだったのだろう。こんなもんじゃないと思うならそれはそれで今から回数を重ねていくのが楽しみだし。今日ので納得、なら、私も嬉しかったのでいいことだ、と思う。笑顔を見ると、ゲネよりはよかったのかなあ、と思うけれど。最後まで教えてくれないだろうなあ。

 

本名でやるSNSはずっと放置している。けれど、本名ではない様々な名前でネットでブログを書き始めてかれこれ十余年。笑っても泣いても怒っても、文字を書いてきている。今日も広い海に、またこんな「嬉しい」という記事を落とす。忘れてしまわないために。あとから来た人が見つけてくれるために。

私の先輩のけんちゃんだって元気にやっているんだろうな、と思うのは、その気になればすぐつながれるインターネットがあるからだ。

 

舞台『エゴ・サーチ』パンフレット・フライヤー

 

舞台「エゴ・サーチ」は、紀伊國屋ホールで4月24日まで。

4月30日、5月1日はサンケイホールブリーゼです。

私の旧来の友人たちは絶対好きです。観に来てください。

 

egosearch.srptokyo.com

*1:鴻上さん評