いつもオレンジありがとう

 2018年7月16日。

 

 「それと、これは私事なんですけれども」

 「いつもオレンジありがとう。」

 

 左前の北横担とおぼしきお姉さんが「渉〜!」と声を上げる。

 後方にいた横尾担さん(と、声をあげたので判断した)が「いえーい!」と叫ぶ。

 

 私はただ口に手を当てて、息を吸い込むことしかできなかった。ハンバーガー状になっているペンライトの上部を、拍手の代わりにばちばちとたたきながら、「そんな」だか、「いいよ」だか、ぽろぽろと言葉を発したかもしれない。

 西武に備えて買ったオレンジのナイキのTシャツに、オレンジのネイル。セブンのキャンペーンのオレンジのブレスレットを手に巻いた私は、どこからどう見ても横尾担だ。

 

 「いつもオレンジありがとう」

 

 オーラスの西武の夜、あの言葉で救われた横尾担がどれだけいたか。ツイッターでもたくさん、「いつもオレンジありがとう」のレポを見た。横尾担は感動していた。大手さんのレポでもたくさん見た。「オレンジを着ていてよかった」「オレンジで頑張ってきてよかった」。

 これは例えば千賀くんが「いつもブルーありがとう」というのとは全く違う次元の話なのだ。誤解がないようにいっておくと、横尾さんは普段からお礼を言わない訳ではない。むしろ、礼儀を重んじて感謝などはいの一番に伝えてくれる人だ。でも、「横尾担」に向けてのお礼があることはこれまでにほとんどなかった。

 

 

 どうして、いったいどうして、世の中には「周りの人を考えられない」人がある一定数いるのか。コンサートで、バックについているジュニアの悪い噂を聞く。番協で、別グループをけなす発言を聞く。好きな人は、どこに潜んでいるのかわからないのに。

 でもこんなのはまだいい。そのファンの人が絶対にいる、その人を含むグループのコンサートで、悪口を言う人。悪意とまではいかなくても、ちょっとした違和感というか、不快感みたいなものに、たくさん晒されることがあった。別にマナー違反をするわけでもない。ものすごく派手な服装をしている訳でもない。でも、なぜか、「横尾担」という言葉は、「横尾担(笑)」であったり、「横尾担w」のニュアンスを持つことが多かった。

 別に、それ自体は不快であるけれどもまあいい。

 問題は彼自身が、なんとなくそれを感じてしまっていることだ。

  拍手が少ない、歓声が少ない、俺のファン少ないから...、太輔と映ったほうが売上が増える…、すねたようにくちばしをとがらせながら、彼がそういう、だれを責めるわけでもない言い訳のようなものを口にするのを何度か聞いている。

 

 こういうことが何度かあって、横尾さんへの思いが「通じない」と思うことがあった。通じないのも彼らしさだと思っていたし、その通じない事実に対して私はイライラすることも、苦しく思うこともなかった。

 けど、悶々としていたのは事実だ。

 だから、そんな彼らが自信を失ったとき、自分を否定するとき、私たちはどう反応したらいいか分からなくなる。悲しいかな彼らは一人の人間であると同時にアイドルという「商品」でもある。自分の好きなものを、自分の大好きな人に否定される。これは本当に、どこの誰に否定されるよりも辛い。そんな気持ちを持たせてしまった原因が私たちファンだとしたら今すぐになかった事にしたい。

 これに輪をかけてつらいのは、私たちがファンで、彼らがアイドルだという事実だ。私たちにはメンバーが出来るように、彼らを弁護することも、背中をさすって、「わたはわたのままでいいんだよー」ということも出来ない。向こうに認知してもらえない限り、私たちが彼らに「好き」「そのままで大丈夫」を示す方法がないのだ。

  以上は私の3年以上前の記事から引用。

 こちらがどんなに好きだ、といったところで、彼は照れ隠しといわんばかりに自己否定の壁をごんごんと周りに築いてしまって、少しの事象を気にして卑屈になって、自分のことを好きな人でさえも傷つけてしまいそうになるのを、私のような新規でも4年近く見てきた。自分もやってしまうとはいえ人がそれをやっているとぎゅうっと苦しくなるのだ。

 

 今年の年明けすぐ、新春イベントの1月6日3部、横尾さんにあることがおこった。

 ...そう、横尾渉というアイドルがすぐ近くまできながら、一ファンがアイドルに向かって、彼に聞こえるように直接、他のアイドルがよかった』といった。これが横アリにいた者に、そしてTwitterでレポを読んでいる者に伝わったのは彼がステージに戻り、「『ミツがよかった』って言われた。」とメンバーに報告したからである。

 一度だけ過去にメッセージうちわを持ったことがある。「横尾さんがいい」といううちわだ。他でもない上記の新春で、いても立ってもいられずに作ったうちわだった。あの日、まだまだ新規で横尾さんに二回目にあった私は、そのうちわを(たぶん)見てもらって、(もしかしたら)うなずいてもらったのだ。

 今回のツアーも、名古屋・大阪・東京・西武と参加して、ずっとうちわを作ろうと思っていた。素敵なご縁と運が味方して、いわゆる「いい席」に入れることが多くて、「オレンジ」の私を横尾さんに見てもらえることが多くて。たぶん、横尾担だということはわかってもらえていたように思う。でも、それだけじゃ足りなくて「何かを伝えたい」と思ってしまうのだ。

 必死で考えた。彼に何を伝えたいのか。でもどうにもうまく言葉にできなかった。「大好きです」「横尾さんがいいからオタクやってるんだよ」「自信もってよ」何を書いてもきっとうちわに書いた言葉なんて彼には通じないだろうと思っていた。気持ちは規定外なので規定内に収まりそうにないのだ。ほんとに正直、「横尾さんがいい」以上にない。横尾さんがいいから、オタクやってるんだ。

 結局、オーラスまでうちわを一切もたずにトップスにまばゆいオレンジを着続けた。(ボトムスにオレンジを着て、名前うちわを持った一度以外は。)ツアー前に、普段あまりお願いをしない横尾さんから「オレンジを着てきて」の要望があったので、とりあえず最低限そこだけは守ろうと思った。

 

 

 

 オーラスの「いつもオレンジありがとう」の言葉は、上に記載したような私のちっぽけなオタク的悶々を全てかっ飛ばしてくれた。 

 わかってんじゃん。わかっててくれたじゃん。私とか他のファンが何を思って何を伝えたくてオレンジを着ていたのか。 分かってくれているとは思っていたけど、なかなか伝わった気がしていなかったパスがやっと通って、向こうからレスポンスが返ってきたのだ。

 「いつもオレンジありがとう」は、横尾さんを好きな人全てに対する、世界一平等で世界一丁寧なファンサービスだった。

 そして同時に、不器用な彼なりの懺悔だったのかもしれないと思う。「いつも」という言葉に込められた、「今までもわかっていたけれども」というニュアンスで、私は、Myojo一万字インタビューの以下の発言を思い出した。

 

 ”そんなこと、ずっと前からわかっているよ。わかっててやんなかっただけなんだよ。”

 これなんだよ。....彼は分かっている。じゃあなんでやらないの、と人はいう。そういう問題じゃないんだ。わかっててもやるのは、ものすごく難しいんだよ。わかってたらやれる人たちは、なんでやらないのと言える人たちは、私からすると出来る人たちで、キラキラで、それこそ人生のセンターみたいな人たちなんだ。

 

  だからこそ、こちらも思うのだ。いつもオレンジありがとう。

 思い入れがなかったとしても、最初はどうでもいいと思っていたとしても、なんだかんだオレンジのものが身の回りに増えだした、と前にラジオか何かで言ってたし、オレンジの服やうちわを探してくれるようになった。そんなツアーの終わりの言葉が、「いつもオレンジありがとう」だったわけで。

 

 これからも、横尾さんがほんの少しでも、「アイドル」を面白いな、と思ってもらえるように応援していくよ。私の夢は、横尾さんの料理番組かペット番組を見ながら、「ママは昔この人が本当に好きで、コンサートとか行ってたんだよ」と娘にいうことだから。 

 

 ありがとうNIKEとINDEXのオレンジお洋服。普段着る機会なさそうな超オレンジだけど。

おしまい!!!!!!!好きだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!