いたれりつくせり。

アニオタからジャニオタ。オタクのオタク。

『なにわ侍ハローTOKYO!!』における、濵田崇裕の立ち位置

 私が初めて舞台「なにわ侍ハローTOKYO!!」を見たのは、2015年1月12日、名古屋市内のカラオケボックスでだった。初めてのジャニオタ友達とのオフで見せられた舞台の映像。その頃にはもう担当は決まっていたし、色々過去を調べていたので結成までの概要は知っていた。神重ちゃんのパートでは泣きかけた。濵ちゃんと照史のパートは大笑いしながら見ていた。

 アメリカに戻ってすぐに親に頼んでそのDVDを買ってもらった。もう一度見て、声に出して号泣した。それ以来、なんだかんだいって週3ぐらいで色々なパートを見なおしている自分がいる。見すぎて、セリフもニュアンスで暗唱出来るようになってしまった。というわけで、何番煎じであろう舞台の考察を書いてみたい。

 あの舞台にはいいところがたくさんある。笑いあり、涙あり、歌あり、踊りあり。「ジャニーズWEST」というグループが詰まっているし、これからWESTちゃんがてっぺんに向かっていく間に彼らに新しく興味を持ってくれる方々にまずおすすめしたい作品となっている。

 でも今回の考察は、(多分)一風変わった、

『なにわ侍ハローTOKYO!!』における濵田崇裕の立ち位置

 という体で書いていきたい。なんていったってあの舞台、考察を始めればキリがない。神山君の「もう歌うつもりないねん」が彼が俳優に転向さされることを示唆していたんじゃないか、とか一人で走ることを選んでいたアイドル藤井君はもしかして中山君を模しているんじゃないかとか書きたいことは色々あるのだが、とりあえず他の部分は担当の方各々の深い考察を読むのを楽しみにすることにして、自担のあの舞台における立ち位置について色々書いていきたい。

 

 注意:以下は全て持論です。こじつけ、深読み、行き過ぎた考察が多めです。

 また、過去については出来る限り調べていますが当時の状況をリアルタイムで知らないため、情報が間違っている箇所がある可能性があります。(観劇はDVDでのみです)セリフはニュアンスです。

 

 

舞台中歌わない、「プロデューサー」という立ち位置

 オーヴァーチュアの部分でRainbow Dreamをアイドル濵田崇裕として歌う以外、ショータイムまで彼は一曲も曲を歌わない。他の皆は全員、歌う部分がある。彼一人だけ、(あんなにきれいで力強い歌声を持っているのに!) 歌わないのである。

 濵田は劇中を通して、とにかくプロデューサーという俯瞰できる、一歩引いた立場から物事を見ている。流星、神山がグループに加入するのを「お前らが決めたことなら」と許可することからも分かるように、彼の役はある意味ジャニーさんのような役割もあるのかもしれないし、ないのかもしれない。

 確かにあの舞台が進むにはプロデューサー的役割の者は必要だろう。ただしそれをジュニアに任せることもできた。あの場所に濵田をおいたのは、(皆が誘われて参加するだけじゃマンネリになる可能性もさておき)彼が確実に他の二人と加入の経路が違ったから、というのがある。

 ジャニーズWEST4デビュー会見がカウントダウンコンサート2013でなされた当時、7WESTがばらばらになったということが一番衝撃的だったのではなかろうか。もちろん濵田他、在籍していた・いるVeteranメンバーがデビュー面子に入っていないということをいう者もいたが、それよりもはるか多数のものが7WESTについて言及しているという印象を持った。7WESTのメンバーたちがお互いの同志を誘う中、濵田はそれをプロデューサーの役割として優しく見つめ、承諾するという役割を与えられている。

  

歌でも踊りでもない、彼の加入の理由

 濵田の加入の理由は一つ、「笑い/面白さ」である。

 最初の4人のトーキョーライブ後の会話のシーンにおける重岡の「俺らアクロバットとか楽器とかできへん」という言葉がちょっとしたヒントになっているとおり、彼の加入にはアクロバットが出来る、楽器ができるというのも理由になっているのだろう。だが、神山や濵田は実際アクロバットや楽器ができることを買われてグループに加入したわけでは全くない。神山は桐山との声の相性と重岡の親友であるという信頼、そして確かな歌声を買われて。濵田は面白さを買われて誘われている。

 あの何度も見慣れてしまえばお約束のしょーもない桐山との掛け合いも、あの大仰なコントも、全てが最後のシーンに来る加入シーンの大胆な布石である。舞台序盤から注目してみても、桐山はプロデューサーで年上、立場も上であろう濵田のめちゃくちゃな物言いに唯一積極的に突っ込みを入れている。後半のお笑いシーン、二人は全力でお互いを「馬」「豚」と貶しあいながらも、とてもとても楽しそうである。

 このシーンはただただ笑ってみるだけではもったいない。いや、もちろんそうしてもいいのだけれど、桐山が「俺らに足りひんもんは笑いや」という結論に至るまでが面白い。コントシーンはもちろん、舞台全体に組み込まれた笑いのテンポの良さと絶妙な掛け合い。彼らが関西ジャニーズJr.として、歌やダンスよりも最初に反省して培い磨き上げたトーク能力が見える。

 

見え隠れする「ひとりぼっち」な彼のグループ加入に対する不安

 桐山ソロの『一歩』の途中、間奏の桐山と中間の会話部分で濵田が現れる。あの曲はシーンをすすめるためのいわばインタールードであり、あそこに出てきた彼はあの二人の会話を聞いている体なのかは定かではない。ただし、中間が振り返り、「俺たちで、てっぺんいくんやろ?」と声をかける時、そこに濵田はいる。ただの偶然なのかもしれないが、そのセリフ部分で中間、桐山と濵田というジャニーズWESTで最も下積みの長い三人組が三角形を舞台上で描く。その姿は言葉では表しがたいのだが、なんだか心を動かされる。

 ジャニーズWESTの兄組(濵田、中間、桐山)は過去に一度デビューを社長に直談判している。デビューを直談判したのにもかかわらず、そして2013年9月頃には7人でのデビューの話がほぼほぼ約束されていたにもかかわらず、12月31日に濵田崇裕のデビューの夢はかなわなかった。4人でのデビュー発表を聞かされた濵田は、「世界中でひとりぼっちになったみたいな感覚」を味わったという。

 彼はきっとひとりぼっちが誰よりも嫌だったのだろう。BOYSが一人また一人と様々な(本当に理不尽な)理由で減って、2011年以降はグループとしてのくくりがなくなり、「濵田崇裕withVeteran」「B.A.D.&濵田崇裕」といった形で、もともとよく一緒に活動していた他ユニットとセットにされる事が多くになった。的確には「関西ジャニーズJr.」以外、どこにも属していないという宙ぶらりん感。

  ひとりぼっちになっても、「(後のジャニーズWESTとなる)皆がやめないなら」と頑張ってきたのにもかかわらず、2013年末にまたひとりぼっちを味わってしまった彼。中間の一万字でも明らかになった濵田の、

「俺は、みんなとおるのが楽しい。今まで通りの関係でみんなとおれるなら、俺は、それだけでええ。正直、デビューとかどうでもええ」

 という言葉。とにかく彼はみんなと一緒にいたかった。どんな形でもよかったのである。もちろん、プロデューサーという形でも。舞台内ではお笑いパートで使用していたなにわ侍の背景に、ちゃっかり自分のうちわを入れてしまうのも(実際うちわを用意したのはパネル作りを指示した濵田か、作成を任された重岡か定かではないが)、グループの為を思って走り回っているのも、きっと彼がみんなと一緒にいるのが楽しくて、これから先もずっと一緒にいたかったからじゃないのだろうか。

 先ほども述べた通り、彼はプロデューサーとして大きくグループの方針に口出しはしない。藤井、神山が加入する際にも「ええよ!」という、クセは強いもののなんともあっさりとした承諾をしてしまう。なんなら彼自身は、ツインタワーの『VIVID』や神山の『虹色の歌』など、それぞれのメンバーがグループに加入するためのツールとして使っている歌を聞いてもいない。もちろんオーディション現場やトーキョーライブで見てはいるであろう。ただ彼はそれを必要としなかった。なぜなら彼がなによりも優先したのは、『グループメンバーたちがお互い加入を認めた』という事実のみだからである。

 それが蓋を開けてみれば、肝心の濵田の加入のシーン。

「このグループに入ってくれ」といった桐山に対する彼の最初の返事は、

 「俺はプロデューサーやって」である。彼にとって自分がその外部の、いわば見守る立場の「プロデューサーである」という事実が、彼にブレーキをかけているのだ。それを桐山は、「プロデューサーとしてじゃなく濵田崇裕として入って」と彼自身の価値を強調する。

「濵ちゃん」の加入劇

 さらに桐山は「濵ちゃんが必要や」と続ける。一万字によるとアドリブで、本心から出た言葉だそうだが、このセリフは舞台中でも一、二位を争うぐらいに素敵なセリフだと思う。あの舞台上で彼は一度もアイドルの「濵ちゃん」ではない。関西を中心に活動している、音楽プロデューサーの濵田崇裕という「役」のはずである。ただ、桐山があそこで「濵ちゃん」といういつもの呼び名を使うことによって、あのシーンの重みは大きく変わる。あの舞台であそこの瞬間行われているのはプロデューサー・濵田崇裕の加入劇ではない。桐山君は、同期としてずっと長い間やってきた、濵ちゃん本人に向かってあの言葉を発しているのである。

 それに対して濵田が発する言葉。

 「…ほんまに入ってええのん?」

なんたることか。ここまで言っておいて、いいに決まってるじゃないか。自分も「ええよ!」ぐらいのノリで快諾すればいいものを、ココに来て躊躇を見せるのである。これが本当に彼の口から出た本心だとしたら、それほど辛いことなんてない。彼はグループのために走り回りながら、それでもなお自分が必要視されていることを信じることが出来なかったのか。あんなに舞台中(お笑いシーン中)桐山君と掛け合いを楽しんでおいて、それでもなお確認しちゃうとかちょっといじわるですらある。ソフトSか。Mだけど。流星と神ちゃんの加入を快諾しながらも、本当に舞台初日の一番最後のシーンまで、自分が本当に誘われるのか、グループに必要なのか、と不安じゃなかっただろうか。

 その不安を「アホやなあ、当たり前やろ!」と吹き飛ばしてもらい、「7人目の侍の誕生やな」と全力で観客を笑わせ、一気に感動の空気がまた笑いの空気になったあと、片手で涙を拭う様は本当に愛おしい。彼はあそこでずっとかけていたメガネを外す。そのメガネがポケットに入ったその瞬間から彼はもうアイドル濵田崇裕。ずっと一緒に頑張ってきたB.A.D.の二人と肩を組んだりグーパンチしあったり、もうものすごくかわいい。

 最後に、これだけ濵田の考察をしておいて重岡のセリフで締めたいと思う。重岡が最後にいう、「よっしゃ、なにわ侍勢揃いやな。」というセリフ。最初の4人から、5人目、6人目と追加され、最後の濵田が侍の誕生を宣言するやいなや彼はこのセリフをいう。

 もちろん観客の私たちにはこの7人で勢揃いだというのは分かる。ただ、この時点ではまだ重岡大毅「役」である重岡がそれをいうのは、冷静に考えると少しおかしい。極端にいえば8人目や9人目が加入するストーリーラインだってあったはずなのだ。でも、重岡はきっとこのグループにこの7人がいて、この7人が揃って初めてグループとして動き出す事を分かっていたのだろう。このセリフは、「この7人」であるという自信に満ち溢れた確証のセリフであり、これを関西ジュニアを引っ張ってきた、そしてジャニーズWESTをセンターとして引っ張ってくれる彼がいうことで、これから先もずっとこの7人なら大丈夫なのだろう、という安心感を私たちに覚えさせてくれる。

 

 …ここまで愛の重く果てしなく暴走している考察とは名ばかりの妄想を読んで頂ける方がいるのか謎ですらあるが、これを読んで少しでも気になったら皆様ぜひDVDを観直していただきたい。もしまだ見ていない方がいたら自信をもっておすすめする、本当に見ていただきたい。

 ここまでの考察というか解説は私の主観でしかないので、皆様の「確かにここを見てみたらそうかもね!」みたいな意見が聴きたいです、よろしくお願いします。